メルプ開発に込められた思い

2020.3.6

今回は、メルプWEB問診開発者の吉永CEOに、サービス開発の経緯と今後のサービスの方向性について伺いました。

メルプ吉永

きっかけは、外来診療で感じた非効率さ

ー メルプWEB問診を立ち上げたきっかけを教えてください。

きっかけは、初期研修終了後の3年目で内科医師として勤務していた時です。当時、私は大学の同期の友人が開業した夜間クリニックで非常勤医として働いていました。そこでは、電子カルテと紙の問診票で運用していて、問診にいくつか課題があることに気づきました。

1つ目は、待合室で一番患者さんが体調が悪い時に問診票を書くのは理にかなっていないことです。実際に風邪の方は「今日はどうされましたか?」の問診に「かぜ」としか書かない人が多かったです。患者さんに一度聞いたところ「しんどいので問診票に詳しく症状を書かないし、そのあと診察室ですぐに医師に伝えるのに、どうして待合室でわざわざ問診を記入しないといけないのか?」と言われたこともありました。

2つ目は、問診票のカルテ転記の作業が意外と時間かかることです。患者さんが記入した紙問診は、まず事務スタッフがスキャンし、PDFデータとして電子カルテの該当フォルダに取り込みます。私はそのPDFを開いて中の文字を電子カルテに転記する作業をして、終わってから患者さんを診察室に呼んでいました。さらに記入済みの問診票は、診察が終わるとシュレッダーにかけます。開業間もない時期で人手不足だったので、私が診療後に40人分くらいの紙問診票をシュレッダーで破棄してゴミ出しすることがしばしばありました。

3つ目は、医師の質問を定形化して診療を効率化できるのではないかということです。医師は症状に合わせて患者さんにする質問は大体決まっています。例えば、インフルエンザ疑いの方の場合、医師は「のどは痛いですか」「咳はありますか」「周りでインフルエンザにかかった人はいますか」と毎回聞いています。こうした質問は事前に定形化して患者さんに回答してもらえれば診療の効率化につながるのではと思いました。

こうした私が実際に診療をしていて効率化したいと感じた課題を解決できたら、他の先生方にも受け入れてもらえるのではと思い、開発を始めました。

メルプ課題

ー 2017年にもなると、電子化した問診票を提供している企業は多数あったのではないですか?

確かにその通りで、タブレット問診サービスを提供している企業は、すでに10社程度ありました。2008年にiPadが日本に上陸して以来、タブレット問診をクリニック向けに提供する会社が出てきていました。しかし、私は既存サービスにはいくつか課題があると考えていました。

1つ目は、取得する問診内容が浅いということです。タブレット問診の多くは、患者さんの基本情報と主訴と症状経過のみを聞いていました。ただ、症状別に医師が聞く質問は大体決まっているので、そこまでWEB問診でサポートすることが付加価値になるのではと思いました。

2つ目は、電子カルテへの連携です。タブレット問診は、連携していない電子カルテが多く、その場合、タブレットの管理画面で問診内容を見て、電子カルテに転記しなければなりません。それでは紙問診がタブレットに変わっただけで、スタッフや医師の労力は変わりません。ですので、いかに連携できる電子カルテを増やすのかも重要だと考えていました。

3つ目は、価格です。初期導入費用だけで100万前後、安くても40, 50万で提供している会社が多かったです。電子カルテがクラウド化が進み価格競争になってきている中で、この価格では導入してもらえないだろうと思いました。

最後に、今までのサービスは待合室で問診を記入することしか想定していなかったとことです。なぜかタブレットを待合室で渡して、その場で患者さんに記入いただくというサービスを提供している企業ばかりで、WEB問診で家から患者さんの端末で記入してもらえれば、患者さんの診察前の待ち時間も減るのにと思いました。

紆余曲折したサービス開発

ー WEB問診サービスをどのように軌道に乗せていったのでしょうか?

実は、最初からWEB問診サービスを提供していたわけではなく、今の形になるまで1年程度かなり紆余曲折しました。この間は全く売れずに会社が2度ほど潰れかけ、一番大変でした。原因は2つあったと考えています。1つは、問診サービスに予約システムを付けたこと、そしてもう1つがLINEを利用したことです。最初は、LINEでクリニックの予約と問診ができるサービスとして売り出していました。

予約システムは、当時調べたら導入クリニックが全体の2割程度でした。「なぜ、便利なはずなのに導入しないのだろう?」と思い、深く考えずにつけました。ところが、フリーアクセスのクリニックに予約システムを導入すると、予約して来院した患者さんと飛び込みの患者さんがバッティングしてクレームになり、結局予約システムを止めたというクリニックが多かったのです。導入されていない理由を探らずに安易に付けたのが、失敗の要因でした。あとは、予約は実はかなり奥が深く、時間予約だけではなく順番待ち予約もあったり、複数の診療科体制の場合は診療科ごとに予約時間枠を変更したいなど、かなりのカスタマイズ性も求められると感じました。

そして2017年当時は、チャットボットがこれからの流れだというニュースや本が多く、魅せられてしまい、LINEチャットボットに乗っかるサービスとして何ができるか、技術ドリブンで考えていました。そして、LINEで予約と問診ができれば、これは便利に違いないと思い込んでいました。

ところが、ちょうどLINEからの情報漏洩が話題になり、セキュリティを心配する声が多くありました。2017年3月に東京都医師会でプレゼンさせていただきましたが、当時は医師会はLINEやSkypeなど商用SNSの利用を非推奨で、LINEを使ったことでむしろマイナス評価でした。また、LINEはプライベートで使うものという認識が強いことや、娘息子さんが使っているから仕方なく使っているという開業医の先生が多く、クリニックで使うイメージがつかないことなども導入のハードルとなりました。

ー そこでWEB問診に切り替えたのでしょうか?

いえ、私を含めて開発中心のメンバーのため、新しい技術を前にすると開発にワクワクして周りが見えなくなりがちで、売上がほぼ0のまま、2017年7月までは、LINEの予約・問診システムの開発を続けていました。「誰に何の価値を提供しているのか」を深く考えられていなかったと思います。

少しさかのぼりますが、4月には開発スピードを上げるために、これまで副業で関わってくれていた現CTOにフルコミットしてもらうことにしました。毎月、給料を支払うことになり、300万円の資本金で始めたのですが、あっという間に底をつき、2回程、翌月でキャッシュが尽きる状態に陥り夜眠れないこともありました。

8月にようやく予約サービスとつけないことを決め、さらにLINEからWEB問診へと切り替えました。WEB問診のみに絞り、全ての電子カルテに問診をワンクリックで取り込める機能を追加したのが2017年11月。今のサービスの原型になっています。そして2018年3月、ようやく光が見えてきました。

ー 光が見えたきっかけは?

耳鼻科の開業医から問い合わせがあってプレゼンに行ったら、その場で年払いでクレジット決済してくれたことです。その先生が「これは絶対に売れる」と力強くおっしゃっていただき、ようやくニーズに刺さるサービスが作れた、あとはしっかり売っていけばいい、と思えた瞬間でした。

サービス拡大と今後の展望

ー 営業活動はどのように進めていったのですか?

最初は、飛び込み営業やポスティング、FAX、営業会社にお願いしてテレアポなどをやっていましたが、全然うまくいきませんでした。医療業界は営業が難しいと言われてはいましたが、これほどとは思っていなかったですね。手応えがつかめたのは、サービスが固まり、ホームページのSEO対策をして、サイトからお問い合わせが増えるようになってからです。

ベンチャーで営業にかけられるリソースも少ないので、いかに営業コストを抑えられるかを考え、インバウンドですでに興味ある先生にのみ、ビデオ通話で遠隔でデモをする方針に切り替えました。ビデオ通話でサービス内容が伝わるか、通信環境は大丈夫かなど不安がありましたが、これがうまくいきました。

現在、北は北海道、南は沖縄県まで200施設を超えるほどに導入してもらえるまでになりました。最近は販売代理店も増えてきて、メルプ導入の先生からの紹介経由で成約に至ることも増えてきましたね。

ー WEB問診や症状チェックのサービスを通じて、どのようなことを実現していきたいですか?

「最適なタイミングで医療を届ける」ことができたらと思います。患者さん向けには、チャット形式の問診で、具合が悪くなったときに、どの診療科にどのタイミングで行ったらいいのかを手軽にわかる症状チェックサービス「メルプkids」をリリースしています。

今は、医療機関向けのWEB問診と症状チェックは分断された個々のサービスになっていますが、ここをシームレスに繋げられたらと思います。症状チェックでの回答内容をWEB問診としても使えて、受診したクリニックの電子カルテにもワンクリックで反映されるようにつなげていきたいです。

あとは、メルプ問診を導入いただいている先生からご要望のある機能は随時スピード感を持って開発しています。「多言語問診」「メルプOCR」などはそうして生まれたサービスです。土地柄、ベトナム人やネパール人が多いので問診を多言語化したいとか、紹介状やお薬手帳の文字情報を電子カルテに取り込みたいといったご要望があり、今後の開発スケジュールをサイトに掲載していますように積極的に対応しています。今後もメルプ問診をどんどん便利にしていきたいと思います。

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