問診で患者さんの1番のお困りごとにフォーカスし、診察を速やかにスタート!
事前のトリアージで院内の感染予防にも活用できるメルプWEB問診


福岡県久留米市にある長井小児科医院様は、小児の疾患はもとより、健康面のご相談など、お子様の日常生活に丁寧に寄り添う診療スタイルをモットーとされています。診察室にはお子様を明るく迎え入れるキャラクターの大きなバルーンが設置されており、優しい空間でお子様のペースに合わせた、温かみのある診療に定評のある小児科クリニックです。
メルプWEB問診は、専任クラークの退職をきっかけに、転記の手間の削減を目的として2024年より導入されています。導入から約1年半経過した現在の運用状況や、メルプWEB問診の導入メリットなどについて、長井院長先生にお話をうかがいます。


メルプWEB問診導入時の様子、実際の使い心地について教えてください
ー 来院前の回答スタイルがしっかりと定着
当院では、閑散期で50名前後、繁忙期で100名前後の患者さんが1日に来院されます。うち2割が初診の患者さん、8割前後が再診の患者さんです。再診の患者さんのほとんどが、来院前にメルプWEB問診を入力してくださっており、当院ではこのシステムがすっかり定着しています。
導入当初は、少々心配な点もありました。まず、問診をどうやって作っていったらいいか、メルプのカスタマーサポートセンターに色々とお尋ねしながら作業を進めました。問診百科(https://hyakka.melp.life/)に掲載されている、他の小児科の先生が作られた問診をテンプレートとして使用することも勧めていただき、当院に合いそうな問診をベースに編集して使うことにしました。テストの段階では、回答がループしてしまったり上手くいかないこともあり、手直しが必要な分、最初は慣れるまで時間がかかりました。しかし、そこが改善されて上手く回りだすと心配は一切なくなりました。本格的に運用を開始してからは、患者さんからの声を元に手直しをしたり、新型コロナが流行していた時期には付け加えの編集をしましたが、現在は問題なく定着していると感じています。
ー 患者さんへ事前周知の甲斐もあり、9割以上の回答率を確保
回答済みの問診をコピー&ペーストで電子カルテに転記するのは受付スタッフが担当していますが、こちらは導入から1ヶ月もかからないうちに比較的簡単に定着したと思います。
患者さんに対しても、導入前から「今後は必ずメルプWEB問診の入力をお願いします」といった案内をホームページに掲載していました。予約システムで予約をとった後も、必ず問診まで入力いただくようにお願いをして、現在は9割以上の方が事前にメルプを入力してくれていますね。小児科ということで、保護者の皆さんは大体スマートフォンを持たれていますし、ご両親の代わりに付き添いの祖父母の方と言ってもスマートフォンを問題なく操作できるようなお若い方が多いので、この回答率を確保できていると思います。
かかりつけではなく予約無しで来院される方や、年に数回ある久留米市の在宅当番医のタイミングで飛び込みで来院される方には、来院後にメルプのQRコードを印刷した案内の紙をお渡しして入力をお願いしています。また外国人の患者さんも割といらっしゃって、日本語が堪能な方は事前にメルプを入力してくださっています。入力が難しい方に関しては、院内のタブレットを使ってスタッフが一緒に入力をお手伝いするかたちで、入力いただいています。
ー 紙問診の利用はゼロ
現在、紙問診の利用は無くして、完全にWEB問診に切り替えました。以前は年に1度、ワクチンの接種歴など詳しい内容を紙問診でとるようにしていましたが、現在はその内容も全てメルプで回答いただけるようにしています。年に1度回答いただく詳細な問診については、「今年初めての診察の方は、入力をお願いします」とメルプの問診内に項目を設けて、その内容を印刷し、スキャンして保存するようにしています。
ー 初診の患者さんに対してもスムーズな案内を実現
市の当番医を担当する日は、9割が初診の患者さんになりますので、カルテを最初から作成する必要があります。その際にもメルプで保険情報や保険証の画像、乳幼児等の医療証を事前にアップロードしてもらうように設定しているため、その事前情報を元に、患者さんが来られる前にカルテを作って、来院の準備ができるのは大変助かっています。
以前は、病気が流行する冬は受付開始の段階で外に30人くらい患者さんが待たれることもあり、保険証や医療証提出のやりとりで受付がパンクしてしまうこともありました。現在は当番医の際には時間帯予約から順番予約に切り替えて運用していますが、メルプで来院の事前準備ができるようになったことで、ご案内までの時間も30分ほど早められるようになりました。当番医以外の通常の待ち時間についても、数分ほど早くご案内ができています。
診療において、メルプWEB問診はどのように役立っていますか?
ー 親御さんが1番困っているところにフォーカスして診察がスタートできる
メルプの事前情報が無ければ「今日はどうされましたか?」から診察を始めて、ヒアリングにも時間がかかります。しかし現在は、メルプの問診で「病状、いつから、どのように、何が心配で」といった内容がある程度事前に把握できているので、早々に診察をスタートできています。熱が続いていることが心配、咳で眠れないことが心配など、具体的にどういったことが心配なのか、お子さんと親御さんが1番困っていることにフォーカスして対応できることが非常に助かります。
病気の症状以外にも、お子さんの日頃の健康面で気になることや心配事をメルプに入力いただいていることも多いです。対面だと親御さんも言い忘れがあったり、以前は再診時に「前回は伝えられていなかったのですが……」と言われることもあったのですが、現在はその辺りもまとめてメルプに入力いただけているので、相談も1度に対応できています。
ー 問診の聞き直しについて
ただ、メルプに入力いただいた情報が最新ではない場合もありますので、実際に入力いただいた時間を確認しながら、患者さんに直接聞き直しを行うこともあります。
例えば問診に「昨日から熱があります」「何時間前から熱があります」と訴えが入っていた場合には、「〇曜日の何時ぐらいから熱があるんですか」と必ず確認をするようにしています。
その他、たとえば「咳がひどい」との主訴があった場合、それがどういった咳なのか回答欄を設けていても、具体的には「わかりません」と入力されていることも多いです。そのため診察時にこちらから、「咳の種類はゴホンゴホンですか、ケンケンですか?」、それとも「ゼイゼイして苦しそうですか?」「ゴボゴボ言っていて、最後吐いてしまうことはありませんか」など、詳しく聞かないと、親御さんによっては具体的な症状の入力が難しい場合もあります。こうしたことから、問診で詳細が把握できなかった症状については、こちらから「こういった症状ですか?」と提示して確認する作業を行っています。
ー 診察の回転率UP、院内の感染予防にもメルプWEB問診が活躍
当院では、患者さん1人当たりの診察時間を5分で設定していますが、「熱はないけど鼻水が出ます」といったような軽度の症状の方だと、診察自体は2分程度であっという間に終了します。診察が早くなった分、メルプにメインの症状以外の相談を入力いただいていた場合ても、柔軟に対応できるようになりました。また、病気の内容によって診察時間も変わり、採血や検査をして結果の説明まで行うと、実際には15分ぐらいかかることもあります。そうしたケースでも、診察冒頭部分のヒアリング時間が短くなった分、やはり診察の回転が良くなったように感じています。
さらに、患者さんのトリアージにもメルプが一役買っています。たとえば、水痘は空気感染の恐れもありますので、メルプに“ぶつぶつ“など症状が入力されていた場合、「ぶつぶつの症状の患者さんが来院されるから、来られたら先に確認して」と看護師に伝えています。最初から「みずぼうそうかもしれません」と問診に入力されていれば、トリアージで来院時にそのまま別のお部屋にご案内します。実際に症状を見に行くと虫刺されだったということもありますが、院内の感染予防という観点でもメルプは非常に役立っています。
カルテ作成について教えてください
ー より精度の高いカルテ作成に向けて、クラークを育成中
SOAPのS(Subject:主観的情報)は基本的にメルプで補完できているので、カルテ作成については、追加や修正に少し手を加える程度で成り立っていますね。診察が終了し、患者さんが退室される時点でほぼ完結できている状態です。
診察内容の所見や説明については、横で診察を聞いているクラークが入力して、その他の足りない点や薬の処方の入力を医師が行っています。ただ、このクラークのカルテ入力については課題感を感じている点もあります。
元々、クラークについては、カルテ入力時に患者さんに背を向ける診察をしなくて済むように、電子カルテ導入のタイミングで専任を採用した背景があります。ただ、クラークの質は、その方が持たれているセンスや力量によって全く違ってくるんです。人の話を聞いてそのスピードで正確に文字を入力することは難しく、誰でもできることではありません。相当なトレーニングを重ねる必要があります。また、医学用語や保険知識なども持ち合わせないといけません。一人前のクラークとして成り立つには、専任でもやはり2、3年はかかります。
当院では専任クラークの退職後、事務員が週替わりでクラーク業務を兼任していますが、患者さんへの診察の「説明」部分を、医師が意図して伝えた通りにクラークが捉えきれず、少々違うニュアンスで入力してしまうというケースが発生することがあります。所見や診断は人によって入力内容が変わることはありませんが、説明の部分はカルテへの拾い上げ方が違ってきます。もし、患者さんに何かがあった時、カルテはこちらが説明を行ったことの証拠にもなり得ますので、説明の部分は1番大事な項目になるのです。そのため、「説明」の部分の課題感の解決を目指してクラークの育成を進めています。
小児科目線で見た時の、メルプWEB問診の導入意義をお聞かせください
ー「情報の収集」「診察スピード」「トリアージ」
メルプを導入したメリットはいくつもありますが、やはり前述した通り「情報の収集」「診察のスピード」「トリアージ」の面で特に便利さを感じています。近隣の小児科クリニックでもWEB問診を導入されてるところが多く、その多くがメルプを採用されている印象です。当院も今後ともメルプを活用していきたいと思います。